狗飼恭子さんの短編小説「月のこおり」を初めて読んだのは、今から20年近く前のことです。


狗飼恭子という作家と、この作品をどういうきっかけで知ったのかは覚えていません。


この作品については、とにかく切ないという印象が残っていましたが、内容に関する記憶がほとんど残っていませんでした。


長い詩を読んでいるような感覚。一語一語、一行一行、透明感があり、繊細で、はかない言葉たち。


数年前に、あらためて読み返してみたくなり、今度はKindleで購入しました。


作中、「写真」について書かれている箇所があり、とても胸に迫るものがありました。


初めて読んだときにどんな気持ちでその部分を読んでいたのかは、もはや覚えていないのですが、写真を撮るようになってからその部分を読んで、とても胸が苦しくなり、だけど、とても共感するものがありました。


作者自身も写真を撮る人なのでしょうか。


調べたことはないのでわかりませんが、ポートレート写真を撮ったことのある者だけが知る思いが、そこには書かれていると思いました。


撮りたい人を、心を開いて、真摯な気持ちで撮るとき、「うれしい」「楽しい」だけではない感情に戸惑い、揺さぶられることがあるかもしれません。


そのことを知る人には心に寄り添うものもとして、まだ知らない人には心の準備として、この作品を読んでみることをおすすめしたいと思います。